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次の日、学校から帰ると玄関に母の靴があったので、
今日は出かけたのかと聞くと、
「そうなの、ママね、耀司がいない間すっごく寂しいから、」
そこまで言うと、そばに会った鳥かごの布を取って見せた。
「鳥さんを飼うことにしたのよ、ほら。」
と、嬉しそうに言った。
可愛らしい文鳥だった。
「名前はもう付けた?」
耀司は自分で付けるつもりで母に尋ねた。
しかし残念ながら母はもうすでに考えていたようだった。
「ええ、ヒロフミよ。」
耀司はその時、子どもながらに嫌な予感を覚えたのだそうだ。
「今度はちゃんと愛してくれるかしら。」
愛しくて堪らない、というような表情で
鳥かごを撫でた。
―ヒロフミは、父の名前。
次の日、学校から帰ると母が泣き崩れていた。
耀司はすぐさま母のそばへ駆けつけた。
そこには昨日飼ったばかりの文鳥の無残な死骸があった。
羽根はちぎられ、足は折られていた。
耀司は思わず目を逸らした。
吐いてしまいたかった。
「耀司、ちがうのよ、ちがうの、ヒロフミが悪いのよ。」
血まみれの手で頬を撫でられた。
生き物の臭いがした。
「逃げようとしたから、逃げられようにしたら、動かなくなっちゃって。」
「耀司、どうしよう、愛してくれないの、だからいけないの。」
「ヒロフミが悪いのよ。」
耀司は泣くことすら出来なかった。
母が壊れてゆくのを、ただ見ることしかできなかった。
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